1 第2部 軽度発達障害児の行動修正及び自立援助
第1部 /第2部01/02/03/

a 療育について

集団療育(SSTグループ)について
PDD児達は、対人関係技術(ソーシャルスキル)に課題を持っています。その為、グループで様々な活動をすることにより、『対人関係技術を獲得していくことが大切』と考えて、以前は、相談に関わった子どもは片っ端からグループに入ってもらっていたこともありました。結果、失敗でした。何があったかというと、”どんな大人になろう” ”この先生に褒めてもらおう” ”この先生の言うことは聞かないといけないんだなあ”ということに一致した理解がなければ、集団で頑張ることはできないからです。ちょっとしたことに引っかかって始終暴れている子も平気でグループに入ってもらってましたから、グループ活動は成立しないのは当然でした。

今では、まずは、個別相談を続けるなかで、私の指示をきちんと聞けるようになり、頑張って勉強する、友達とも上手に付き合うように努力する、将来はちゃんと働ける大人になるということについて一致した子どもだけで、グループをしていますから、話し合いをしていても、ゲーム(もちろん、DSとかではありません)をしていても、他児への配慮の無さなどを注意されても、「はい」と聞けるようになっています。だから、グループ場面で教えたことを日常生活でも意識して頑張ってくれるようになっています。
PDD児達は、何らかの問題行動を抱えて相談場面に現れますが、それが解決したら万全かというと、なかなかそれだけでは、障害の本質を変える努力をしていける子どもにはなりません。ですから、当初の問題が個別相談で解決した後、じっくり付き合って彼らの人生を応援していく場面がSSTグループであると位置づけています。
天才的な才能はなく、空気を読むのが下手で、人付き合いが上手くないPDDの人にとって、今ほど生きにくい世の中はないと思います。真面目に頑張っていくことさえ、バカにされたりします。だから、こういう生き方をしよう、こういう生き方で良いんだと正しい生き方を教え、そして、それを皆で支え合う場所が必要だと思っています。SSTグループはそのためにこそ必要だと思っています。


薬物療法
問題行動改善のために薬はとても有効に働いてくれます。
最も、有効なのがコンサータ(メチルフェニデート)です。気が散りやすく動き回っている子ども、ボーっとして集中できない子ども、すぐにいらいらする子どもにとてもよく効きます。彼らの人生を、良い方向へぐっと舵取りしてくれる経験を数えきれないほどしています。大切なのは、コンサータを使って良い状態を体験したら、学習の積み重ねや褒められる体験の蓄積によって、セルフエスティーム(自尊感情)を高め、コンサータ無しでも頑張れるように成長してもらうことです。飲んでから12時間ほど効きます。が、副作用として目立つのは、長く効き過ぎて夜眠りにくくなる場合がよくあります。
ルボックスという薬は、こだわりのきつい子ども、いらいらしてしまう子ども、緘黙のようになかなか話せない子どもに有効です。
リスパダールという薬は、大暴れする子どもに時々飲んでもらうことがあります。しかし、この薬の長期服用は感心しません。 薬は、上手く使えば、薬無しで努力して1年かかることを1ヶ月でできてしまうほどの効果があります。
薬というとむやみに嫌う人もおられますが、メリット、デメリットを冷静に天秤にかけ、必要最小限度で処方されることはあります。


どんな青年に育っていってほしいのか
今どきの子育てでは、「子どもの自主性」というものがとても重視されます。「嫌がることを押しつけてはいけない」という風潮が流行です。授業中、立ち歩く子ども、教室から出て行ってしまう子どもは珍しくありません。そのような子どもを無理矢理座らせて良いのでしょうか?とは、真顔で質問されることです。
我慢させることは良くないことという神話とでもいうような風潮がとても強いのですが、授業中に立ち歩く自主性、同級生の悪口を言う自主性というものがあるのかなと疑問に思います。
彼らが大人になったときに、どんな青年になっていることが幸せな人生を送っていける可能性が高くなるのかと考えると、平均的な能力を持った子どもの場合、やはり、勤勉に腰軽く動ける人として育つことが、自立に最も近くなると思います。
さて、授業中に立ち歩く子にはどうするか?ですが、答は、無理矢理座らせることではありません。先生の指示は聞かなければいけないということを教え、指示して座らせ、そして、十分に褒めるということが、回答になります。


参考資料 ソーシャルストーリー

良い質問と悪い質問
授業中は、先生は教えます。生徒はいろいろと質問をします。
さて、質問には、良い質問と悪い質問があります。
良い質問をすると、それに先生が答えてくれることで、生徒皆にとって、
授業内容がもっとよく解るようになります。
悪い質問をすると、先生がそれに答えるのに時間をとられすぎて授業が進まなかったり、
答えてもらっても、皆のためにならなかったりします。
悪い質問は、授業の進行を妨げる質問です。
でも、良い質問と悪い質問の区別は、とても微妙です。
これからは、良い質問をした時には、先生は答えてくれますが、
悪い質問をした時は、先生は、「それは悪い質問だから、待ちなさい」と言います。
そう先生に言われたら、質問を続けるのをやめて、先生の話や他の生徒の質問を聞くようにします。
授業が終わったら、悪い質問について、先生が説明してくれます。頑張ります。

まけてもだいじょうぶ
学校ではいろんなゲームをします。
つなひきや、たかおに、ドッジボール、リレーなどです。
ゲームでは勝つ人と負ける人がいます。みんな勝ちたいとおもいます。
でも、だれでも、勝つときもあるし、まけることもあります。
いつも勝つとはかぎりません。
だから、勝てなくてもだいじょうぶです。
ぼくは勝てなくても「またこんど、がんばろう」とおもうようにどりょくしてみます。

なおしでおこりません

べんきょうやれんらくちょうでは、まちがえずにかけるのがいちばんいいことです。
でも、だれでもまちがえることがあります。
まちがえたときは、なおしたらいいだけです。
まちがえをなおすと、だんだんまちがえずにかけるようになります。
まちがいをなおすことで、だんだんとかしこくなっていけます。
なおしでおこることは、はずかしいことです。
なおしのたびにおこっていたら、おともだちはいなくなります。
だから、これからは、まちがえてもおこらずになおすようにします。

いやなことがあったときに、たたいたりぶったりしません

たたいだり、ぶってりしていると、みんなは、○○くんのことをきらいになります。
あそんでくれなくなります。
だから、これからは、いやなことがあったときには、たたいたり、ぶったりせずに、
せんせいに、そうだんにいきます。
これからは、たたいたり、ぶったりしないように、がんばります。